それでは怖い話をします。
「真ん中の男」
中国でうわさになった話しです。
ある夜のことです。塾から帰る数人の中学生がバスに乗りました。
三七五番という路線バスで、最終便でした。
バスには運転手と車掌、それに七十すぎと思われる小柄な老人が乗っているだけでした。
5分ほど走ってつぎのバス停についたとき、3人の客が乗ってきました。
ところが3人ともすごくよっぱらっているようで、足下はふらつき、ぷーんと酒のにおいがしました。
とくに、まん中の男は首をうなだれて、他の二人に両脇をささえられながら乗りこんできました。
男たちは、中に入ると、三人がけの座席にならんで腰をおろしました。
そのとき、後ろの座席の老人が立ち上がりました。
切符を買うためのようです。
そして、中学生たちの前を通るとき、うっかり、その中のひとりの足をふみました。
「いてぇ。」
声をあげて足をひっこめた中学生に、老人は、
「なんだこの足は。じゃまだ。」
とどなりました。
「なんだと。」
足をふまれた中学生が、立ち上がりました。
「足を投げ出してすわるんじゃねえ。」
「足をふんだのは、おまえだぞ。」
中学生がにらみつけると、
「なんだ、その目は。やるきか。やる気ならおりろ。」
と、けんかをうってきました。足をふまれたうえに、どなりつけられたのではたまりません。
中学生たちは老人といっしょにバスをおりました。
「おい、中学生だと思ってばかにするなよ。」
一人が手を上げると、老人は、
「ちょっとまて。いまおまえたちの命をたすけてやったんだ。」
といいました。
「なんだって。」
「さっき乗ってきた三人の客を見たか。」
といいました。
「さっきの客だって?あのよっぱらいか、それがどうした。」
「真ん中のやつは死んでいたぞ」
「死んでいた。うそだろ。」
中学生たちは信じませんでしたが、
みょうにこわくなって老人に手をだすのをやめました。
「おまえたちが信じないのなら、あしたの朝のニュースを見てみろ。」
そういって、住所と電話番号を教えると、去っていきました。
翌日のニュースで、学生たちは三七五番の最終バスが事故をおこしたことを知りました。
バスはふかいみぞに転落し、運転手と車掌が殺されていたのです。
そして、そのそばにはもうひとつの死体が横たわっていたそうです。
さっそく中学生たちはお礼の品をもって老人の家をたずね、命を救ってくれたことに感謝をしました。
この話しは、昔中国の北京の高校生のあいだでひろまり、当時は、夜おそくに三七五番バスに乗るのをためらう人もいたほどだそうです。
仮面 (2012/06/30 Sat 22:53:50) ID:xYjRhNzRiMzk SoftBank